函館とロシアの交流の歴史について研究している、函館日ロ交流史研究会のページです。 このページは、会報をはじめ、これまでの刊行物や活動成果を公開しています。

【史料紹介】前号の補足

2019年3月17日 Posted in 会報

倉田有佳

 前号(No37)にて、札幌総領事から寄贈されたロシア領事館の写真のうち、【写真2】が、「ソ連領事館時代」に撮影された写真の可能性が高い、と報告しました。ところが、先日ファブリーチニコフ総領事から、この写真が明治40年の大火以前の写真であることを教えていただきました。
 1907年末に完成したロシア領事館の写真は非常に珍しく、領事館内部の写真に至っては、これまで見たことがありませんでした。それというのも、この領事館は、完成から1年も経たないうちに大火で焼失したためです。
 そして、帝政ロシア時代の領事館の調度品については、帝政時代の最後の領事となったレベデフが、1925年2月に一家と共に亡命者の身となって日本を去る前に競売にかけられ、ソ連領事館には引き継がれませんでした。その様子について地元紙は、一家は函館を去るにあたり、領事館にあった家財道具(ドイツ製のピアノ、ロシア製のレコード、タイプライター、絨毯類、肘掛け椅子、額縁、リガ製の大型菓子皿などの食器類)は、一切まとめて2千円で売却することになり、希望者が連日領事館へ押しかけたと伝えています(『函館日日新聞』1925年1月28日、『函館新聞』1925年2月9日)。
 このたびの写真は、当研究会にとってのみならず、今後、函館市で「旧ロシア領事館」の復元・活用を考えることになれば、その際の史料としても役立つに違いありません。
 追加情報を含め、ファブリーチニコフ総領事には、改めて感謝したいと思います。

※現存する「旧ロシア領事館」は、焼失した同じ場所(幸坂を登り切ったところ)に1908年末に完成。

「会報」No.38 2017.3.31 第37号補足